「日本の男女格差とフェミニズム」について大学の自由テーマのレポート課題書いたので載せます

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日本の男女格差とフェミニズム

 

 

序章 「ジェンダー・ギャップ指数」から見る問題点


 2019年12月17日に世界経済フォーラムによって、19年の「ジェンダー・ギャップ指数」(the Global Gender Gap Report)が発表された[1]。日本は2018年の110位からさらに順位を下げ、153カ国中121位となっている。
 「ジェンダー・ギャップ指数」とは、経済、教育、健康、政治の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を意味している[2]。
 日本の「ジェンダー・ギャップ指数」で特に低い評価を受けたのが、政治と経済の分野である。政治分野では0.049で144位、経済分野では0.598で115位となっている。その2つと比較すると、教育分野は0.983、健康分野は0.979と1に近い指数だが、世界的に見てこの2つの分野は男女格差が少なくなっているため、順位は91位と40位という結果にとどまっている[3]。日本の総合評価121位は、G7参加国の中で最下位である。
 現在の日本では、政治活動において国会における女性議員の割合が著しく低く、企業でも幹部は男性であることが多い。教育においても初等教育での格差はほとんど無いが、大学進学率は男性が56パーセント、女性が44パーセントとなっており、大学院修士課程の入学者では男性70パーセント、女性30パーセントと格差が大きい。科学、技術、工学、数学といった理系分野を専攻する女性の少なさにも注目すべきである[4]。
 筆者は、男女格差を無くすために、女性の政治と経済、高等教育への参加を推し進めるべきだと考えている。そのためには現在の日本でどういった取り組みが行われるべきだろうか。
 

 

第1章 女性の社会参加


 女性の政治や経済などへの参加率が低い原因として、家庭、学校、企業、政府の責任が挙げられる[5]。具体的には、家庭や学校で「女性らしく」、「女性は男性を支えるべき」といった日本の古くからの思想を無意識に刷り込まれることや、男女で同じ大学を卒業しているにも関わらず、就職後の研修に差があり昇進・昇級のスピードが違うという事例がある。また、配偶者の扶養からはずれ、自ら健康保険や厚生年金の保険料を支払うことになる「130万円の壁」など、女性の働き方を抑制させるような税制も政府は放置したままである。
 しかし、女性の立場を考えた政治活動を行うことのできる男性政治家が少ないため、男女格差は埋まるどころか、「ジェンダー・ギャップ指数」の順位が毎年下がり続けているという現状がある。
 たしかに男性と女性では身体のつくりが違うため体力面でも差があり、女性の生涯には妊娠・出産といった大きな変化もある。過去に女性の社会参加を阻んでいた大きな要因のひとつが妊娠・出産・育児である。現在の日本では産休・育休制度が以前に比べて整ってきてはいるが、マタニティハラスメントなどによって退職せざるを得ない女性もまだ多くいる[6]。厚生労働省はそういった生物学上の違いによるハラスメントを無くすためにハラスメント対策に関する通達[7]を出しているが、「女性は家を守り、働く男性を支えるべき」という考え方が根強く残っている日本において、個人が意識を変え社会全体が差別に気づかなくては、根本的な解決には至らないだろう。
 


第2章 北欧諸国の男女平等実現


 19年の「ジェンダー・ギャップ指数」では、1位がアイスランド、2位がノルウェー、3位がフィンランドと北欧の3か国が上位を占めている。教育と健康の分野の値では日本と大きな差は無いが、政治と経済の分野において非常に高い評価を受けている。
 北欧で男女格差が無い理由として、男性だから、女性だからという理由で「職につけない」という不平等がないことや、“専業主婦”という存在がめずらしくなっており、女性の経済的な自立や税金を払う義務と権利が、社会で当たり前のものとして認識されていることが挙げられる[8]。

 男女平等を推進している各国では、幼い頃から性別で将来の夢を決めないように促すことや、コンビニに成人向け雑誌を置かないこと、男性の育児休暇を充実させることなど、様々な工夫がされている[9]。
 コンビニに成人向け雑誌を置かない意図は、男女平等で障壁となってくる「女性を性の対象として見ることで仕事ができないと決めつける」という意識の刷り込みを無くすためである。また、「ジェンダー・ギャップ指数」世界4位のスウェーデンでは、育児休暇が父母合わせて約16ヵ月あり「育児は女性に任せておけばいい」という社会の目も存在しない[10]。
 これらの工夫が行われている背景には、男女格差を無くそうという北欧の人々の個人の意識と社会のつよい意思があると考えられる。
 日本では専業主婦世帯が1980年には約1100万世帯であったが、2018年には約600万世帯まで減っている。それに反して共働き世帯は1980年に約600万世帯であることに対し、2018年には1219万世帯となっている[11]。
 働く女性が増えているにも関わらず日本の男女格差が無くならない原因として、女性が男性に庇護される立場に甘んじているということも少なからずあるだろう。「家事を行えば男性が働いて養ってくれる」という考え方が日本人の意識の中に残っていることは否めない。第2章で前述した「130万円の壁」も「結婚した女性が夫の扶養から外れないために非正規雇用で働くこと」を促進する原因となっている。
 


第3章 「フェミニズム」の捉え方


 女性の自立心を促す教育が、今後の日本で最も重要視されるべき事項である。現在の男女格差を無くすためには、国民の意識改革から始めなければいけないことは第2章、第3章から明らかである。
 「フェミニズム」という言葉があるが、これは本来「女性の社会的・政治的・法律的・性的な自己決定権を主張し、性差別からの解放と両性の平等とを目指す思想・運動。女性解放思想。女権拡張論」[12]という意味がある。
 しかし現在「フェミニスト」という言葉がSNSなどで一人歩きしており、「女尊男卑」のような考え方を主張している者もいる。そういった所謂“過激派フェミ”といわれる人々の影響で「フェミニズム」が本来の意味から遠のいているように筆者は感じている。
 女性が政治に参加することで、男性政治家とは違った視点からの意見や、社会的弱者に寄り添った政治が行われることが期待される。より良い社会にしていくために、「フェミニズム」は現代の日本人にとって改めて大切にすべき考え方であり、再度その意味を捉え直す必要がある。
 


終章 日本の男女格差を無くすために


 「ジェンダー・ギャップ指数」を見ることで、日本の男女格差が非常に深刻なものであり、世界(特に北欧諸国)に遅れをとっていることが分かった。男女格差は社会全体の問題であり、社会全体の問題は個人の意識を変えなければ改善することは無い。
 個人の意識改革を進めるためにも、世界の社会制度や日本の問題点に関心を持ち視野を広くするための教育を、初等教育や家庭教育など早い段階から行うべきだろう。
 日本人の政治への無関心はたびたび問題とされることが多いが[13]、社会問題や政治に関心を持つことが男女格差を無くすための第一歩だと考える。個人が男女格差の問題点について意識し、それを次の世代へ繋げることが、現代の日本を生きている若者の使命である。

 

 

引用文献


[1] JOICFP「2019年『ジェンダー・ギャップ指数』日本が110位から121位へ(153カ国中)」,2019年12月19日更新,https://www.joicfp.or.jp/jpn/2019/12/19/44893/ ,(最終閲覧日:2019年12月24日)
[2] 内閣府「『共同参画』2019年1月号」,2019年2月15日更新,http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2018/201901/201901_04.html ,(最終閲覧日:2019年12月24日)
[3] JOICEP,前掲
[4] 朝日新聞デジタル「教育の男女格差、原因は?」,2019年2月18日更新,https://www.asahi.com/articles/ASM2F56BTM2FUTIL03Z.html ,(最終閲覧日:2020年1月10日)
[5] 同上
[6] 厚生労働省「『妊娠したから解雇』は違反です」,2020年1月10日更新,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000088308.html ,(最終閲覧日:2020年1月10日)
[7] 厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」,2018年6月19日更新,https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000137179.pdf ,(最終閲覧日:2020年1月10日)
[8] HRpro「世界男女平等ランキング、北欧諸国が軒並みトップ入りする理由」,2014年11月29日,https://www.hrpro.co.jp/agora/1751 ,(最終閲覧日:2020年1月10日)
[9] DearB「アイスランドフィンランドノルウェー北欧が男女平等実現のために実践してる事」,2016年12月27日更新,https://english.cheerup.jp/article/4360 ,(最終閲覧日:2020年1月10日)
[10] 同上
[11] 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「図12 専業主婦世帯と共働き世帯」,2019年6月10日更新,https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html ,(最終閲覧日:2020年1月10日)
[12] 広辞苑第七版
[13] co-media「ドイツと日本の若者の間に見る、政治的関心の差。その根本的理由とは・・?」,2020年1月10日更新,https://www.co-media.jp/article/20282 ,(最終閲覧日:2020年1月10日)